大雪山フラワーウォッチング
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7月18日(木) 1日目
羽田空港7:45発JALで旭川空港9:25着のフライトで出発。旭川から専用車に乗り換え、国道39号、273号を経由し大雪高原山荘(1280m)に正午前に到着。日本秘湯を守る会会員の山荘で営業期間は夏山シーズンの4ヵ月間(6月10日~10月10日)に限られている。大雪山の緑岳(今年標高年の2019m)への登山口となっていて、秋の紅葉シーズンになると、山荘に通じる林道はマイカー規制となる。
到着後早速、緑沼周辺のトレッキングで足慣らしする。最初に山荘の隣にあるヒグマ情報センターに立寄る。ここで指導員のレクチャーを受けないとゲートに入ることができない。ヒグマとの遭遇を避けるために、15時までに戻ることが条件だ。(ヒグマの活動時間は朝と夕方らしい)


ヒグマ出没のポイントマップ。右回りルートは土砂崩れで閉鎖中のため、左回りの緑沼で折り返し。


ゲート入口に強力な爪をアピールするヒグマのはく製が置かれている。
12:30 ゲートを通り探索を開始する。コースは多少のアップダウンがあるが、ほぼ平坦な道が続く。雪解けの後から高山植物が一斉に咲き出している。
↑ オオバミゾホオズキ ↑ ウコンウツギ
↑ オオバタケシマラン ↑ ミツバオウレン
↑ エゾノリュウキンカ ↑ ミズバショウ
ルートが木道になると、雪解けがもたらした沼が点在し、湿原地帯へと変わる。湿地を好むエゾコザクラの群生が見られる。
13:50 土俵沼からバショウ沼、滝見沼と巡り目的地の緑沼に到着する。ここから雲に霞んだ緑岳がわずかに見える。小休憩後、門限が迫るヒグマ情報センターに折り返す。
14:55 大雪高原山荘は自然湧出温泉がある。山荘の周辺で泥火山のような噴出口を見ることもできる。ここでしか見ることができないダイセツヒナオトギリソウを探し見つけた。
↑ ダイセツヒナオトギリソウ(固有種) ↑ クロマメノキ
ヒグマの口から湧き出るかけ流し温泉は、北海道の豊かな自然があふれ出している。

夕食は地物の山菜やイワナの塩焼きなど素朴な料理のもてなしで始まる。ガイド(ツアー会社の代表で高山植物とアイヌ語に詳しい)がイワナの骨酒を参加者(6名)にふるまってくれた。
7月19日(金) 2日目
3:40 大雪高原山荘の夜明け。西の空には満月がほのかに輝いている。

4:00 山荘を出発して、緑岳登山口から登山を開始する。
山道脇の切り株にゴゼンタチバナが着生していた。しばらくはトドマツなどの樹林帯の斜面を折り返しながら高度を上げる。
4:50 樹林帯の視界が開け、見晴台に着く。ここからは平ヶ岳に延びる高根ヶ原の稜線が見渡せる。
5:15 樹林帯を抜け第一お花畑に着く。正面に緑岳2019mが初めて姿を現す。木道の両側は雪解けを待って高山植物が密生して咲き乱れる。

↑ キバナシャクナゲ ↑ エゾノツガザクラ
↑ チングルマ ↑ アオノツガザクラ
第一お花畑を過ぎると、雪渓地帯を渡って進む。日中解けた雪面が凍り付いて滑りやすくなっているがアイゼンを装着するほどではない。
5:35 第二お花畑に着く。雪解けが進んでいるのに湿地を好む高山植物はほとんど開花していない。第一お花畑とはわずかな高度差でも咲き出すタイミングが微妙にずれている。

5:50 第二お花畑を過ぎてから緑岳に向かって勾配が少しづつ増してくる。
6:10 最後の雪渓地帯を渡り切り、緑岳の山腹が迫まる。尾根道に取り付くと低木地帯に変わり、新たな高山植物が見られる。
↑ ツマトリソウ ↑ エゾマルバシモツケ
↑ エゾウサギギク ↑ メアカンキンバイ
6:40 低木地帯を抜け、緑岳の裾野を大きく回り込みながら山頂までの急勾配を登ると、大雪山系の展望が一気に開ける。
 ↑ エゾイソツツジ
↑ ヒメクロマメノキ ↑ イワブクロ




7:35 緑岳山腹は岩場を好む高山植物が咲き乱れ、登山の疲れを癒してくれる。
↑ メアカンキンバイ ↑ エゾイワツメクサ
↑ コマクサ ↑ チシマキンレイカ
↑ ヒメイワタデ




8:15 山頂に近づくにつれて勾配が緩み、大雪山の主峰旭岳方面の展望が開ける。
後旭岳2216mと右に白雲岳2230mを望む。鞍部に見えるは間宮岳2185m。 旭岳2290mは後旭岳に隠れここからは見えない。
高根ヶ原の縦走路の先に、雲が湧く忠別岳1963mを望む。 さらに右方向奥手をアップすると王冠を伏せたようなギザギザの山体が登山者憧れのトムラウシ山2141mだ。
8:20 緑岳山頂2019mに着く。緑岳から小泉岳にかけての稜線は高山植物の宝庫になっている。
↑ コマクサ ↑ イワギキョウ
↑ エゾヒメクワガタ ↑ ヨツバシオガマ
↑ エゾハハコヨモギ ↑ エゾツツジ
↑ クモマユキノシタ
↑エゾイワツメクサ ↑ イワウメ
↑ キバナシオガマ ↑ エゾオヤマノエンドウ
↑ エゾタカネツメクサ ↑ チョウノスケソウ
↑ エゾツツジ ↑ メアカンキンバイ
9:20 白雲岳避難小屋への分岐を直進して、小泉岳への稜線を登る。
↑ イワベンケイ ↑ チシマキンレイカ
↑ チョウノスケソウ ↑ キバナシオガマ
↑ ホソバウルップソウ(大雪山固有種) ↑ エゾツツジ
9:40 広大な縦走路を振り返ると、越えてきた緑岳山頂が見える。
↑ リシリリンドウ ↑ ミヤマリンドウ
9:55 小泉岳の斜面を登りきると緩やかな台地が広がる。
↑ エゾタカネスミレ ↑ キバナシオガマ
↑ ホソバウルップソウ ↑ ミヤマアズマギク
広大なガレ地の一面が高山植物の生育環境になっている。これだけ多種多様な高山植物を一時期に見られるところが大雪山トレッキングの一番の魅力だろう。
10:25 小泉岳2158mに着く。平坦な山頂はどこがピークかわからないが、標識があるところが山頂だ。

10:30 すこしガスがかかり出す。遠方の視界が悪くなるが、分岐の標識を確認して赤岳方向に進む。
雪渓を抱く旭岳2290mの北斜面がわずかに確認できる。右側は北海岳2149m。

       黒岳1984m ↑
11:05 赤岳山頂2078mに着く。軽い昼食をとった後、縦走路を下って銀泉台を目指す。
チシマクモマグサ、山頂直下で見つけた。縦走路ではここだけで咲いていた。
11:40 第4雪渓を下り終える。
↑ キバナシャクナゲの大群生 ↑ エゾノハクサンイチゲ
↑ ウラジロナナカマド(紅葉前) ↑ ミヤマキンバイ
↑ エゾコザクラ ↑ エゾノサワアザミ
↑ エゾヒメクワガタ ↑ アオノツガザクラ
12:10 第3雪渓のお花畑を下る。
↑ チシマヒョウタンボク ↑ ウコンウツギ
↑ ジンヨウキスミレ

12:40 駒草平の平坦なガレ地に出る。コマクサの群生地として保護されている。
↑ チシマツガザクラ ↑ エゾツツジ
駒草平を過ぎて雪渓が残る斜面を下る。
↑ リンネソウ ↑ ウメバチソウ
14:15 銀泉台の赤岳登山口に到着する。銀泉台までは国道273号から林道がつながり駐車場がある。待っていた専用車で層雲峡温泉まで下山して2日目の登山を終える。
7月20日(土) 3日目
深夜の雨で黒岳から旭岳姿見平までの縦走路で増水の危険があるため登山中止となる。予定を変更して層雲峡ビジターセンターに立ち寄る。展示物の中にナキウサギが目を引く。鳴き声は聞こえても姿を見ることはまずない。

13:00 不安定な天候の中、旭岳の姿見平周辺を散策することになり、大雪山旭岳ロープウェイ乗り場に向かうことになった。昼食の弁当を食べてロープウェイに乗車する。乗車時間10分で標高1600mまで高度を上げる。
姿見の池周辺につくられた一周約2kmの散策路を歩く。早速エゾシマリスに出会う。一面チングルマの群生は見事である。いままで出会った高山植物にお手軽にお目にかかれるので山歩きしない観光客には人気のスポットになっている。あいにくの天気で観光客が疎らなのが救いである。
すり鉢池と鏡池を合わせて夫婦池と呼ばれている。本日予定していた黒岳からの縦走で、裾合(すそあい)分岐方面からの出口になる標識がある。
↑ ミヤマアキノキリンソウ ↑ エゾオヤマリンドウ
↑ チングルマ(開花終了) ↑ エゾマルバシモツケ
展望台からすり鉢池と鏡池を望むと夫婦池になるが、小雨にかすんで見えない。
↑ エゾイソツツジ ↑ メアカンキンバイ
14:00 姿見の池。散策路の一番のビューポイントだが残念何も見えない。
14:05 旭岳石室。旭岳山頂方面に向かう分岐点となっている。
チングルマの群生を最後に、姿見駅から旭岳ロープウェイで下山する。ロープウェイの旭岳駅から専用車で、明日の登山予定地十勝まで移動して3日目を終了する。
7月21日(日) 4日目
天気が回復し、まずまずの登山日和となる。宿泊した十勝岳温泉凌雲閣1279mの2F窓から安政火口が見える。奥に上ホロカメットク山と上富良野岳が連なり、登山予定の富良野岳はさらに右手方向になり全体画像には収まらない。
5:00 雲海に包まれた富良野を下界に見ながら、凌雲閣を出発する。
5:30 凌雲閣の彼方に雲海が切れた富良野が見れてくる。
5:40 安政火口が正面に迫る。すでに森林限界を超え、ハイマツ地帯に変わるがここまでは一般の観光客も歩けるハイキングコースになっている。
6:20 安政火口から尾根を回り込むと、十勝岳と上ホロカメットク山方面の分岐点に出る。行く手前方の先には富良野岳1912mを望むことができる。
6:50 三峰山の長いガレ場の山腹をトラバースして進む。
振り返ると十勝岳2077mの尖がった山体がわずかに見える。
↑ サンカヨウ ↑ ミヤマキンバイ
↑ ヒメイワショウブ ↑ ハクセンナズナ
↑ アラシグサ ↑ トカチフウロ
8:20 三峰山(さんぽうさん)の長いトラバースがやっと終わり、ガレ地の縦走路分岐に出た。小休憩後、富良野岳山頂を目指し最後の登りに入る。
↑ メアカンキンバイ ↑ コマクサ
↑ ヨツバシオガマ ↑ ユキバタカネキタアザミ
↑ 三峰山1866m(奥の山体) ↑ 十勝連山
↑ シロバナハクサンチドリ ↑ エゾノハクサンイチゲ
↑ ウズラバハクサンチドリ ↑ コイワカガミ
9:00 縦走路分岐から山頂に続く急勾配の稜線は一面お花畑。ここでしか見られない高山植物があり、気分爽快で疲れなど吹っ飛ぶ。
↑ イワヒゲ ↑ イワヒゲとミヤマアズマギク
←エゾルリソウ(固有種) この花を見るために登山者はやってくる。山頂直下の岩場にわずかに咲く希少種。
9:15 富良野岳山頂1912mに立つ。雲が沸き立つ十勝連山を一望する。早めの行動食をとり、山頂を後にピストンに入る。
↑ ミヤマオグルマ
12:20 三峰山の山腹をトラバースして安火口まで戻る。

13:00 十勝岳温泉に下山し、凌雲閣の温泉で一汗を流す。風呂上りには持参した冷えたスイカが待っている。休憩後、帰路の航空便まで時間があるので、専用車で富良野観光を楽しむ。
↑ ミヤマリンドウ
富良野メロン園でメロンソフトにかぶりつく。半切りメロンにソフトクリームを乗せた豪快な食べ方に大満足。
市内の小学校の校庭が北海道の中心地点(東西南北の交点)になっている。
富田ファームに入園する。夏休みの観光客で大混雑している。展望台に上ってみるが、残念ながら富良野岳山頂付近は雲に隠れて見えない。見えているのは前富良野岳1625m。晴れていれば十勝岳から遠くトムラウシ山まで展望できるビューポイントになっている。
延々と続く麦畑や夕暮れ迫るシラカバ並木を見ながら、旭川空港に向かう。

旭川空港20:15発JALで羽田空港22:00着のフライトで無事帰宅する。中日の縦走が悪天候で中止となるアクシデントがあったが、充実したフラワーウォッチングの4日間を終える。
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