霊山 立山三山
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7月17日(火)早朝4時前に圏央道ICに入り、関越道から上信越道を経由し北陸道を走って、立山ICを降りる。立山黒部アルペンルートの入り口、立山駅までは県道6号を行く。往復970kmのロングドライブで立山登山の旅がスタートする。

今年の関東の梅雨は6月29日にあっさり明けてしまったが、西日本では7月になって甚大な豪雨被災が起きた。今回の登山計画は21年前に扇沢から入山し、雨で途中断念した家族登山のリベンジでもある。(今回は夫婦のみ)

12:20 立山駅(475m)からケーブルカーに乗車する。美女平まで標高差500m、平均勾配24度の急斜面を7分で登る。

12:40 美女平(977m)から立山高原バスに乗り継ぎ、標高差1500mの室堂を目指す。
高原バスは立山杉の原生林の中を徐々に高度を上げて走る。突然視界が開け日本一の落差を誇る「称名滝」のビューポイントに着く。しかし駐車スペースがないため、バスは徐行しながら進み下車観光することはできない。
弥陀ヶ原を過ぎると森林限界を越え、立山連峰が一望できるようになる。立山は雄山、大汝山、富士ノ折立からなる連山の総称。

立山三山と呼ぶ場合、雄山・大汝山・富士ノ折立をいう場合と、浄土山・立山・別山をいう場合があるがどちらも正しいようだ。
天狗平付近からソウメン滝が見えてくると、地獄谷の荒々しい地形へと景観が一変する。
雪の大谷を抜けると赤い屋根の室堂ターミナルが見える。夏でも雪渓が残り、下界の猛暑とは別世界が広がる。
13:30 室堂ターミナル(2450m)に到着。室堂平から立山連峰の雄大な山々を望みながら、宿泊先の「みくりが池温泉」まで散策を楽しみながらトレックする。
雷鳥沢はかなりの雪渓が残る。雪解けが進んだ室堂平では高山植物が一斉に咲き出している。


         チングルマ
雷鳥沢の稜線の後ろに日本最後の未踏峰「剱岳」が顔を出す。
みくりが池にも大量の残雪がある。積雪量が多い立山の雪解けは、これから一気に加速しそうだ。
コイワカガミ アオノツガザクラ
地獄谷の方向に「みくりが池温泉(日本秘湯を守る会)」が見えてきた。日本一高所(標高2410m)にある天然温泉の宿だが、冬場は交通機関が閉鎖されるため、通年営業できない。今年は7月6日から営業を再開している。
宿泊人数が限られているため予約が必要。部屋は個室と相部屋に分かれる。相部屋は2段ベットで最大8名となっているが、個人ごとにカーテンの仕切りや電源コンセントも付いていて天井も高い。普通の山小屋のような堅苦しさはなくリラックスできる。
夕食後、富山湾に沈む夕日を見にデッキに出てみる。やがて満天の星空が瞬く頃早目の就寝にする。


7月18日(水) 05:40
地獄谷の朝日は日の出より約1時間遅い。東の立山連峰が朝日を遮るためだ。温泉宿の周囲を散策してみるが、想ったより寒くない。今日一日晴天が期待できそうだ。
06:00 食堂入口に行列ができる。朝食はバイキング方式で、山小屋としては立派過ぎる内容だ。自家製のヨーグルトも出され、一日分のエネルギー補給は充分賄える。

07:05 登山開始。みくりが池に薄氷が張っている。夜は気温が下がったようだが、温泉宿は山小屋と違って定員以上の宿泊者を受け入れないので快適な一夜を過ごせた。
登山路は室堂山荘を横切って一ノ越に伸びる。現存する日本最古の山小屋「室堂小屋」が見える。
石畳で整備された登山路の所々に雪渓が残る。雪面にキックをけり込みながら少しずつ高度を上げて行く。

雄山と浄土山の鞍部にある「一ノ越山荘」までは緩やかな斜面が続く。
近年、日本で初めて立山に氷河あることが科学的に立証された。剱岳の三の窓と小窓の東側渓谷と雄山の東側渓谷の3ヵ所だ。立山の地形は氷河期の痕跡である氷河谷(カール)で形成されている。
08:20 夏山シーズンに備えてヘリコプター荷上げが忙しい「一ノ越山荘」に到着する。

一ノ越からは東の視界が開け、北アルプスや八ヶ岳の山々が一望できる。野口五郎岳の奥にアルプスのランドマーク「槍ヶ岳」を望む。
遠く東方向には八ヶ岳連峰まで見渡せる。気温上昇が心配だが、絶好の登山日和となった。
08:40 雄山の急斜面、ここから立山の本格登山が始まる。山道の岩場は崩れやすく落石に注意する。
09:10 山頂の雄山神社が見えてくる。

眼下には室堂平から地獄谷まで残雪の広大なカール台地が広がる。
登山路を振り返ると浄土山頂2831mの後方に薬師岳2926mを望む。薬師岳は山容が美しい山とし人気が高い。
更に左に旋回し、黒部五郎岳2840m、笠ヶ岳2898m、御嶽山3067m、乗鞍岳3026m、水晶岳2986mと北アルプスから中央アルプスまで大展望が開ける。
石川と岐阜の県境にまたがる白山2702mを遠望する。富士山、立山と共に日本三霊山の一つ。
山頂の雄山神社にもヘリコプター荷上げが急ピッチで進む。
09:40 雄山の一等三角点と方位盤。

山頂神社で安全登山を願って神主の祈祷(有料500円)を受ける。雄山3003mは立山三山の主峰になる。

↓雄山山頂からの360度パノラマが広がる。
槍ヶ岳3180m・奥穂高岳3190m 浄土山の後方に黒部源流の山々
        大汝山3015m↑     ↑剱岳2999m・手前は別山2874m



←富士山3776m
10:15 雄山山頂を左に回り込み、大汝山までは20分の行程を行く。
10:40 大汝山3015mの山頂に立つ。岩峰の先端にある山頂は足の踏み場がほとんどない。立山三山で最高峰だが、主峰は雄山になっている。

頂上直下に大汝休憩所がある。映画「春を背負いて」の撮影舞台となった山小屋だ。
11:00 大汝休憩所でトイレ休憩後、富士ノ折立に向かって穏やかな稜線を行く。
東斜面の渓谷の下に黒部ダムが小さく見える。かなりの高度差に感動する。
富士ノ折立までは雄大な氷河谷の景観を楽しみながら歩く。
11:20 富士ノ折立から一気に急勾配の下りが始まる。東斜面の氷河谷地形にはまだ相当な雪渓が残る。
ヨツバシオガマ ミヤマツメクサ
稜線の鞍部から真砂岳2861mに登り返す。ザレた登山路だが展望がいい。
後立山の眺望が素晴らしい。右から鹿島槍ヶ岳2889m、五竜岳2814m、唐松岳2696mと連座する。かつて歩いた縦走路が懐かしい。
ミヤマキンバイ イワギキョウ
真砂岳の巻道から真砂乗越を経て、別山への稜線が延びる。西斜面には雪渓が残る。

真砂乗越から東斜面に削り取られた氷河谷にも相当な残雪がある。稜線上には内蔵助山荘が見える。
雪渓が消えた斜面は一面お花畑が広がる。夏山登山は一気に進む季節の変化に楽しみが多い。
12:55 別山2874m山頂到着。ここで昼食をとる。直射日光が強くかなりの水分が奪われた。塩分補給はカップラーメンと携帯食で補う。携帯した1.5Lの水も残りわずかとなった。
稜線中央に劔御前小屋、残雪が多い劔沢 剱岳2999mの全貌
雲が湧きたつ剱岳の雄姿 縦走してきた立山連峰
13:35 昼食後、別山の稜線をたどりながら劔御前小屋を目指す。次第にザレ場の登山路が配松帯に変わる。
雷鳥を発見。雷鳥は通常6個の卵を産み、7月上旬に雛がかえり、この時期は子育て真っ最中だ。よく見ると足元の配松の中で雛が騒がしく動き回っている。
14:05 劔御前小屋を出発して、雷鳥沢の下りを開始する。

登山路から雪渓が消えた斜面には高山植物が一斉に咲き出している。ここでも雷鳥の親子が現れ食事タイムのようだ。登山路近くによく現れるのは、登山者がいると天敵に襲われないことを知っているようだ。
渓間に残る雪渓を見ながら九十九折の下り坂を降りるが、高度の高い立山では強力な紫外線で体力の消耗が激しい。
登山路の傾斜が緩み雪渓が目前に迫ってくる。
シナノキンバイ ハクサンイチゲ
ツガザクラ コイワカガミ
雷鳥沢の斜面から縦走してきた真砂岳と立山連峰を望む。一面にチングルマが満開となり、短い夏を咲き誇っている。


コバイケイソウの大群生
15:40 雷鳥沢下りの最後は雪渓歩きとなり、沢に架かる橋を渡ると雷鳥沢キャンプ場。ここから登り返して雷鳥沢ヒュッテに到着する。
19:00 雷鳥沢ヒュッテの温泉は立山連峰を見渡す展望風呂になっている。ひと汗流した後、生ビールでほてった体をクールダウンする。6時の夕食後夕日に映える立山を望む。
7月19日(木) 07:10
朝食を済ませ雷鳥沢ヒュッテを出発する。予定では大日岳登山ではあったが、想定以上の体力消耗があり、安全上計画を変更して下山を決める。朝の散歩だろうか庭先に雷鳥の親子ずれが現れる。雷鳥のオスは子育てに関与しないので、見かけるのはメスの雷鳥と雛ばかりだ。この時期、オスを見かけることはほとんどないそうだ。
地獄谷越に奥大日岳、大日岳が見える。室堂ターミナルまでは約200mの標高差を登る。
劔御前小屋から始まる雷鳥沢下り斜面が平たい雷鳥沢キャンプ場まで裾野を延ばす。
クロユリの開花がすでに終わり、山道にはイワイチョウやリンドウが多くみられる。

リンドウ池にはまだ大量の積雪が残る。山道は右に稜線を大きく回り込みながら上り坂が続く。地獄谷の淵に建つ雷鳥荘が眼下になる。

赤い湿地の血の池をに沿って山道が延びる。立山連峰は右に浄土山、鞍部の一ノ越の左に雄山が連なる。
地獄谷の先に天狗平山荘を望み、富山湾からさらに日本海まで水平線が広がる。
08:10 みくりが池を通過し室堂ターミナルに到着する。オープン前のインフォメーションセンターに雷鳥の山岳救助隊マスコットが置かれている。

08:40 美女平行き高原バスに乗る。
09:30 美女平
着。

09:40 立山ケーブルカーに乗り継ぐ。
09:47 立山駅到着。

駐車場に停めておいたマイカーで往路をたどり帰途につく。夕刻前に無事帰宅、立山登山を終える。


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