 |
5月24日 屋久島2日目
ホテル4:45出発、登山ガイドの運転する車で安房林道に入る。所要時間は約1時間、原生林の山中に奥深く進む。5:40紀元杉を通過する。前日までの悪天候が一転し快晴の朝となった。 |
 |
5:50 安房林道終点淀川登山口1360mに到着する。標高は縄文杉よりも高く、まだ肌寒い気温だ。
6:05 登山準備を完了し、入山する。ここから宮之浦岳まで往復16kmを歩く。淀川登山口は宮之浦岳を最短で登ることができるコースだが、歩行時間は10時間、遅くても7時までに登山開始することが求められている。 |
 |
淀川小屋までは約50分アップダウンのある尾根道を越える。歩き出して約10分で淀川大杉がある。看板もなく見過ごしやすい屋久杉だが、山岳ガイドの案内で迫力の1枚を撮影する。 |
 |
他にモミやツガなどの巨木が美しい森が続く。花崗岩の岩盤に縦横に張り巡らされた木の根に足をとられないように慎重に歩く。 |
 |
 |
|
|
|
原生の森は苔の宝庫でもある。屋久島には約650種の苔が自生し、日本の苔の約半分をここで見ることができるそうだ。 |
 |
 |
|
|
 |
6:52 尾根道の急な下りを降りると、世界自然遺産地域に入る。復路はこの辺りが最後の登り返しとなり、体力的に一番きついところになる。 |
 |
6:55 淀川小屋1380mに到着する。水場と最後のトイレがあり、宿泊できる無人小屋になっている。渓間に朝日が射し込み、満開の時期となったハイノキの白い花がすがすがしい。 |
 |
 |
 |
7:05 水補給を終え、美しい渓谷に架かる淀川歩道橋を渡り、まずは花之江河(ハナノエゴウ)を目指す。 |
 |
 |
|
屋久杉の大木には様々な木々が着生している。地表にほとんど養分がなく、苔類から水分を補給しながら、光の届くできるだけ高い場所で成長する。 |
 |
7:15 淀川小屋を出発してから本格的な登りが始まる。先頭の山岳ガイドを含め4人だけのパーティーなので、コンパクトで機動的な登山が楽しめそうだ。 |
 |
 |
 |
ヤクシマシャクナゲなどが着生した屋久杉。ここでは様々な植生が寄り添いながら原生の森を形づくっている。 |
|
|
 |
屋久杉根元の空洞部に苔で作られたミソサザイの巣があると山岳ガイドに教えられて覗いてみる。独特の鳴き声で小型の鳥だがいい場所を見つけたものだ。 |
 |

モミの大木にも着生が見られる。 |
|
|
|
少しでも日当たりのよい谷間に向かって枝をいっぱいに張り出している。根元で絡み合っているヤマグルマは絞め殺しの木と言われ、大木と生存競争が行われている。 |
 |
 |
 |
7:45 淀川小屋から1kmの案内板。この辺りから森の植生は杉からモミやツガに変わる。屋久島は世界自然遺産に登録された理由の一つに、亜熱帯から亜高山帯に及ぶ植生の垂直分布がある。高度を上げるにつれて植生の変化を楽しみたい。 |
|
 |
|
山岳部の降雨量は多い年で10000mmを越えるという。ニュージーランドのような苔類の密生が随所で見られる。
|
 |
 |
 |
8:00 尾根上に辿り着くと傾斜が緩み高木から中木地帯へと代わり、徐々に背の低い木々が目立ち始める。 |
 |
 |
 |
日当たりのよい尾根道では淡いピンク色のサクラツツジが見ごろを迎え、ヤクシマシャクナゲも咲き出した。 |
|
|
 |
8:20 展望が開けた山道にでる。遥か雲海の彼方は東シナ海だ。 |
 |
高盤岳(コウバンダケ)トーフ岩が見える。ピークに取り残された岩石が風化して割れた形が豆腐に似ていることで付いた名前らしい。 |
|
|
 |
8:25 登山道の脇道に入ると展望所がある。正面に見える投石岳(ナゲイシダケ)1830m、左奥に見えるのが安房岳(アンボウダケ)1847m。ルートはこの連山をトラバースしながら進む。ここからはまだ宮之浦岳は見えない。 |
 |
 |
|
|
 |
8:35 泥炭層湿原の小花之江河に着く。立ち枯れの老木がある木道を進むと、10分ほどで花之江河に至る。杉の南限である屋久島は高山帯になると白骨化した杉が目立つ。洋上アルプスの屋久島では標高1500mぐらいまでが杉の植生限界のようだ。 |
 |

南限種ハイノキ |
|
|
 |
 |
 |
8:50 山間に広がる花之江河1640mに到着する。正面に黒味岳を望む。花之江河は屋久島のいくつかの集落から始まる登山道が合流するポイントになっている。ここから宮之浦岳への登山道は一本に集約される。 |
|
|
 |
9:00 小休憩後出発。宮之浦岳まで約半分の道程が過ぎ、残り3.8kmとなる。 |

固有種アクシバモドキ |

固有種ヤクシマシャクナゲ |
 |
9:15 花之江河から500m進んだところに黒味岳分かれがある。 |
 |
ヤクシマシャクナゲとハイノキのコラボ咲きが見事で、山道を楽しませてくれる。 |
|
|
 |
 |
|
9:35 花崗岩の岩盤を乗り越えて進む。 |
|
|
 |
9:40 投石平(ナゲイシダイラ)の広場に出る。風が通り気持ちがよい、見晴もよく休憩ポイントとして最適な場所だ。山岳ガイドがいるので安心だが、視界不良の時は進路の方向を見失いやすいので注意がいる。 |
 |
 |
 |
黒味岳山頂1831mの眺望がすばらしい。九州第6の高峰だ。よく見ると巨岩に立つ登山者が小さく確認できる。 |
|
|
 |

投石平の周囲はヤクシマシャクナゲの群生になっている。 |
|
|
 |
9:45 展望のよい投石平を出発して、投石岳の急坂を登ると森林限界を越える。
 |
|
|
|
|
 |
10:00 登山路の先に、わずかながら奥岳の主稜を成す宮之浦岳と永田岳が見えてくる。 |
 |
周囲の斜面に群生するヤクシマシャクナゲが一斉に開花が始まった。前日にはほとんど咲いていなかったようだ。(山岳ガイド談)幾度とアップダウンを繰り返しながら安房岳の中腹をトラバースして進む。 |
|
|
 |
前方に見えるのは栗生岳で宮之浦岳は奥に隠れ山頂の一部しか見えない。宮之浦岳へは栗生岳のピーク越えて行く。 |
 |
 |
|
|
 |
10:15 ヤクシカ(固有種)に遭遇する。ホンシュウジカに比べ体が小さく屋久島と口永良部島だけに生息する。この辺りからヤクシマダケ(固有種)が生い茂るようになる。
|
|
 |
|
|
 |
 |
|
 |
|
10:20 登山路からトラバースした九州第5の高峰、安房岳1847mを望む。
|
 |
10:30 前方に九州第4の高峰、翁岳1860mが見え出し、宮之浦岳1.4kmの案内板を通過する。
 |
|
|
 |
10:40 栗生岳が目前に迫る。その奥に宮之浦岳の山頂部をわずかに望むことができるが、山容全体は依然として見えてこない。 |
 |
10:45 翁岳の渓間を下ったところに最後の水場ある。水補給した後、宮之浦岳山頂まで1kmの急登が続く。 |
 |
山道を振り返り翁岳のピークを望む。栗生岳は増々勾配が強くなる。最後の正念場を越えなければ宮之浦岳に立つことはできない。 |
 |
 |
|
 |
|
|
 |
11:00 ヤクシマダケの草原が広がる稜線の先に、ゲンコツ岩と翁岳が見える。 |
|
|
 |
 |
 |
11:10 九州第3の高峰、栗生岳1867m山頂を通過する。ここから初めて宮之浦岳山頂までの稜線が見えてくる。宮之浦岳の頂上は双耳峰になっていて左に見える西峰がやや高く山頂になっている。 |
|
 |
|
|
 |
11:15 手前に栗生岳、その奥に左から翁岳、安房岳、投石岳、黒味岳と屋久島の奥岳1800mクラスが連なる。主峰の宮之浦岳を中心に九州第7座までの高峰が屋久島に集まる。 |
|
|
 |
 |
|
11:25 九州の最高峰、宮之浦岳1936mに登頂。山頂からの展望は360度、遮るものは何もなく、人工構造物が一切目に入らない大自然のパノラマが広がる。 |
 |
 |
九州第2の高峰、永田岳1886m |
稜線は小高塚岳を経て縄文杉へ |
 |
 |
雲海を隔てて鹿児島薩摩半島 |
奥岳連山の彼方に種子島を望む |
|
 |
 |
12:15 山頂で昼食をとった後、往路をたどり下山を開始する。 |
 |

コケスミレ
屋久島の草花は養分が少なくどれも小さい |
 |
14:25 花之江河まで快調に下山する。復路の約半分を過ぎ、これから大きな上り下りが続く。 |
 |
15:50 淀川歩道橋まで戻り、淀川小屋で休憩する。これから先は最後の登り返しが待っている。 |
 |
16:45 淀川登山口に無事帰還する。約11時間に及ぶ登山が終わり、山岳ガイドの車で宿泊ホテルへ向かう。 |
 |
帰路の途中、ヤクスギランド前にヤクシマザルが出没する。本土のサルより小型で体毛が長く固有種、国立公園内は保護されているので、のんびりして動じない。
18:00 宿泊ホテルに帰る。早速風呂に入り汗と疲れを流す。夕食は新鮮なトビウオの姿造りや、キビナゴの天ぷらに舌鼓を打つ。屋久島の食事は新鮮な海の幸が豊富で大満足。登山の疲労は食事でリカバリーできる。 |
 |
 |
|
  |