東北さくらシリーズ X                           

4月26日4時30分、5月連休前半の未明、東北に向けて愛車を走らす。今回のさくら旅は、日本海ルートから東北三大さくらの一つ角館を目指すことにした。

今年は冬の積雪の影響で、桜の開花が遅れている。仙台で満開の便りも届くが、角館はまだ蕾のようだ。出発の前日からどんどん気温が上がり夏日となった。ちょっとしたらの期待もあって、ダメ元でさくら旅を強行することにした。
常磐道から磐越道に入り、東北道を北上し、山形道に入る。連休前半とあって渋滞もなく快調に月山道まで来た。

9時40分、月山の山々はまだかなりの積雪に覆われているが、道路の除雪が終わり、これから本格的な夏スキーシーズンが始まる。
10時26分、再び山形道に入る。日本海側でも気温が上昇していて夏日となっているようだ。晴天に恵まれたが前方に迫ってくる鳥海山は白く霞んで見える。
11時、今日の予定に余裕ができたので、ちょっと寄り道して酒田の日和山公園のさくらを見て行くことにした。ソメイヨシノが満開になって、地元のさくら見物客が大勢繰り出している。港の臨時駐車場に車止め、徒歩10分ぐらいで小高い丘の上に出る。ランドマークになっている木造六角洋式灯台は、明治28年に最上川河口に建造されたものが現在の場所に移築されている。
公園の池には、帆を上げた北前船が停泊し、さくら祭りを盛り上げている。
展望台から公園の全貌が見渡せる。
ソメイヨシノの小枝に咲いたさくら。
昼食は道の駅「鳥海ふらっと」で簡単に済ませ、吹浦から前日開通したばかりの鳥海ブルーラインを走る。鳥海山の登山口となる鉾立(五合目)まで雪の壁が続く山道は爽快である。
13時40分、鳥海ブルーラインの最高地点、鉾立の駐車場に到着。
除雪がだいぶ進んでいるが、レストハウスはスッポリ雪の壁の中に埋もれている。雪原に出る雪道を登り、白銀に輝く山頂をカメラに収める。絶好の天気に無ぐまれ、春山登山やスキーを楽しむ人たちで賑わっている。
鉾立山荘からの下りは、鳥海ブルーラインを秋田県側の象潟に降りた。象潟からは日本海に沿って国道7号を北上する。
16時、今日の宿泊地である道の駅「岩城」に到着。秋田の日本海沿線の道の駅は、どこも天然温泉を併設していて、野宿ツアーには最高条件が整っている。日本海に沈む夕陽が美しいスポットになっているが、洛陽にはまだ時間があるので、その前に露天風呂温泉で疲れを癒すことにした。

気温上昇で海面近くが霞んでいるため、太陽がすっかり色あせてしまった。(洛陽時刻18時20分の10分前に撮影) 夕食は、ログハウスレストラン「ケベック」で生ビールと海鮮焼きカレーで一日を締める。走行距離600km、21時前に早めの就寝。
旅2日目は早朝6時前に起床し、洗面を済まして早々に出発。今日の目的地の角館へは、岩城ICから日本海東北道に入り、秋田道を経由して協和ICを降り、国道46号を走る。途中コンビニで朝食をとるが、秋田の山中は杉林ばかりで桜が見当たらない。峠を越して、少しずつ桜の木が沿道で見られるようになったが、やはり蕾のようだ。心配的中か?
桧木内川(ひのきないかわ)が見えだす頃、なんと桜が咲いているではないか。予測したように気温上昇で一期に咲き出したようだ。

8時前に角館に到着し、市内の駐車場を探す。まだ観光客が動き出す前の時間だったため、武家屋敷近くの駐車場を確保できた。野宿の一番の効果は朝の動き出しが早いことだ、一般の観光客と同じように行動していたら大渋滞に巻き込まれてしまう。
早速、人出の少ない早朝の桧木内川堤を散策する。
川堤の両側に北国の風雪に耐えた桜並木が約2kmに渡って続く。これを見に遥々やって来た甲斐があるというものだ。しかし、あと1時間もすれば沿道は人波で溢れてしまうであろう。贅沢なひと時を独占して楽しむことにした。
昭和天皇の誕生を祝って植えられたソメイヨシノは、北国の厳しい自然環境に耐えるため、川堤の斜面方向に枝を張り出している。
桜の幹を観察すると、雪の重みであろう、あちこちに折れ跡や割れ目があるが、そのたびに新しい枝が伸びてきて樹形を形成している。北国の桜はほんとうに生命力が強い。
武家屋敷は枝垂桜が満開を迎えていた。京都から伝わったものらしいが、黒壁の武家屋敷が桜色に染まる光景は見事の一言に尽きる。
アイスクリーム売りの名物おばちゃん。注文を受けると、金属容器の中にあるアイスクリームを手際よく桜の花びらのようにして仕立ててくれる。味はシャーベットのように爽やかで、なんとも言えないレトロさがたまらない。
桧木内川堤の広場では郷土民謡と踊りが始まった。
ちょっと歩き疲れたので古風な喫茶店でコーヒーブレイク。なんともクラシックなコーヒーが出てきた。深入りで香ばしい味が旅情を醸し出してくれる。

室内の雰囲気は大正レトロにタイムスリップしたようだ。通りの人混みは塀で遮られ、窓の空間から見る桜は絵画展のように華やかだ。

青柳家の広大な邸内は角館歴史村になっている。
庭は四季折々の草花を眺めながら散策ができるようになっている。ふっと見つけたシラネアオイが可憐な薄紫色の花をつけていた。憧れの高山植物がここで見られるとは驚きだ。
そろそろ昼飯時、お食事処「森の食彩館」で秋田名物の稲庭うどんを食べる。さらりとした風味と麺腰の強さが特徴。300余年の食文化があるそうだ。
13時40分角館を後に今日の宿泊地盛岡に向かう。途中道の駅「雫石あねっこ」で美人の湯につかる。アルカリ性単純温泉で肌がつるつるになる。

盛岡に17時に到着。宿泊ホテルの近くにある盛岡城址公園を散策したが、ソメイヨシノは散って、枝垂桜が見ごろになっていた。
ちょっと早いが恒例旅の疲れは地元料理でとることにした。南部藩長屋酒場という変わった屋号だが創業は寛文五年となっている。カウンター席は予約で満席だったが奥座敷のコタツ席に案内してくれた。室内の照明を抑えて昔の生活空間を演出した造りになっていて、テキパキと係りがやって来ては注文を取って行く。
付きだしは、なんとサバの煮つけ用にミニコンロがセットされた。魚貝類は三陸の新鮮なものが入っているようだ。刺身の五点盛りを註文したら七点盛りにサービスしてくれた。他わかめ豆腐など普段口にしない料理が楽しめる。
今日の一押しは、三陸産ホヤだ。どぶろくと合わせて注文する。どぶろくは1.5合をお椀に入れて出してくれる。何杯おかわりしたか定かではないが、スッキリとした飲みごごちでグイグイいける。どぶろくは発酵を止めていないので土産に持ち帰ることはできない。

気持ちよく酔いが回ったところで、今回の旅を締めることにする。
明日は、東北道を一路帰宅の途に就く。総走行距離1250km。

Top